魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー（ザ・マーグレーヴス・パーベヤー）

「そういえばさ、サンジュってお酒飲めるの？」
「さあ……飲んだことないから」
「それじゃあ、今日はサンジュの飲酒初解禁日ってことで、盛大に飲みましょ！」
「で、でも……酔っぱらってもし失礼なことでもあったりしたら……」
「大丈夫だってば。あたしってばお酒は強いから、ばっちり面倒見てあげる。向こうにはフィッツもいるしね！　女たるもの、いい人に誘われた時のために、どれくらい飲んでいいのか一度は試しておかなきゃ駄目よ……決定ね！」
「もう……」

　いつもの押しの強さでリラフェンが勝手に方針を決めて、やれやれと私が承諾する。そんな関係に変わりつつある昨今の私たちを乗せた大型の馬車は、いざパーティー会場であるハーメルシーズ城へと出発していった。

　お城の停車場から、続々と出てくる自慢の一張羅を着た人たちに紛れ、私たちもパーティー会場であるハーメルシーズ城の大庭園に移動する。

　格好はお店に出たままなので少々恥ずかしいが、私たちのことを覚えてくれている人もいて、温かい言葉を掛けてもらえたのが嬉しい。