「そのためにフィッツは、必死で剣を振るい武勲を挙げた。その姿に俺は完全に見たて違いだったことを思い知らされたよ。やつは短いこれまでの半生ですでに守るべきものを思い定め、一心に牙を研いだ。そして誰もが羨むような速さで名を上げ、俺の腹心にまで登り詰めたのだ。ここが戦の絶えない国境であるということも相俟ってな……」
たとえ家族ごっこであったとしても、彼もまた、リラフェン以外の兄弟と壮絶な経緯で別れている。彼にとっては妹だけが心の拠り所で、残されたたったひとつの希望だったのだろう。
そこでディクリド様は、一旦息を吐き出すと話を元に戻す。
「フィトロに結婚話が持ち上がっているのは事実だ。相手が伯爵家の娘だということもな」
「それじゃあ……」
フィトロさんがその方と結婚し、リラフェンと離れ離れになることは、もはや覆しようのない事柄なのか。そんな不安を声音に出した私の目を見て、ディクリド様は否定する。
「だが、やつは返事を保留にしている。通常ならばまず受けるべき話なのにも関わらず、な……」
やはり……フィトロさんの気持ちも揺れているのか。それを嬉しいと思う反面、彼に幸せになって欲しいと願うリラフェンのことを思えば、腑に落ちない部分もある。
たとえ家族ごっこであったとしても、彼もまた、リラフェン以外の兄弟と壮絶な経緯で別れている。彼にとっては妹だけが心の拠り所で、残されたたったひとつの希望だったのだろう。
そこでディクリド様は、一旦息を吐き出すと話を元に戻す。
「フィトロに結婚話が持ち上がっているのは事実だ。相手が伯爵家の娘だということもな」
「それじゃあ……」
フィトロさんがその方と結婚し、リラフェンと離れ離れになることは、もはや覆しようのない事柄なのか。そんな不安を声音に出した私の目を見て、ディクリド様は否定する。
「だが、やつは返事を保留にしている。通常ならばまず受けるべき話なのにも関わらず、な……」
やはり……フィトロさんの気持ちも揺れているのか。それを嬉しいと思う反面、彼に幸せになって欲しいと願うリラフェンのことを思えば、腑に落ちない部分もある。



