魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー（ザ・マーグレーヴス・パーベヤー）

「調子いいみたいじゃない。リラフェンから話を聞いて安心したわ。彼女にくっついてばっかりだったあなたがお店を出すなんて思ってもみなかったから、驚いてたの。そうそう、あなたがプレゼントしてくれたあの魔導具、便利で助かってる」

　彼女の視線の先には私が残して行った魔導具が置いてある。ちゃんとお世話になった人の役に立ってくれているなら、なによりだ。

「それはよかったです。最初は街の人たちも馴染みが無くて、信用してもらうのが少し大変でしたけど、リラフェンの力を借りてうまくやれています。ですけど……」

　私は軽く口止めした上で、ここに訪れた事情を明かした。
　するとどうやら思い当たるところもあったか、ベラさんは瞼を伏せて考えた後、言葉を選んで話し出す。

「私……知り合いからちょっとした話を聞いててさ。それが理由かはわからないんだけど……」
「聞かせてください！　今はどんな手掛かりでも欲しいんです！」
「なら、ここだけの話ね」

　声を潜めたベラさんから、語られたのはこんな噂だった。