魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

 とりあえず誤ったイメージから離れて欲しく、力を込めて訂正すると彼はあからさまに胡散臭そうな顔をした。

「魔術ぅ? そったら怪しげなもんいらねぇよ。呪われちまうかもしれねぇ。帰ってくれ、仕事の邪魔だ」

 彼は私を追い払うように手を振る。以前の私ならここで引き下がっていたかも知れない。
 ……でも、もう私はリラフェンと共同とはいえ“辺境伯の御用達”の立派なオーナーなのだ。その責任を胸に彼に食い下がる。

「お、お願いします! 一度私が使うところを見てくれませんか! 本当に便利なものなんです! 損は絶対にさせません!」
「そう言われたってだなぁ……」

 押し問答していると、そこかしこに散らばっていた雇われ農民たちもなんだなんだと周りに集まってくる。そんな中、無理やり追い返すのも体裁が悪いと考えたのか、仕方なさそうにウィリーさんは私に機会を与えてくれた。

「そんじゃ、あんたの背中に差してるやつ、そいつは鍬だろう? もしそれが便利だってんなら、ここいらの土を耕して見せてみな。こないだ雨が降ったばかりで土は重たく固まっとるぞぉ。娘っ子の手じゃどうにもならんはずだ」

 そう言うと、ウィリーさんは腕を組んで私の後ろに下がった。これは絶好のチャンスだ。