「へぇー……。ふふっ、まあいいんじゃない? ここの人たちは皆ディクリド様のことが大好きだし。となると……どう続けようかしら? “辺境伯のお膝元”……これはパッとしないなぁ。それじゃ、“辺境伯と美女たち”……はダメか、なんかちょっといかがわしいし。あ、これはどうかしら、“辺境伯に敬礼!”。……うーん、軍隊じゃあるまいし、なんか違う……?」
ひとりでぶつぶつと考えた後、彼女は閃いたように顔を跳ね上げ、目を輝かせた。
「そうだ! 魔導具店“辺境伯の御用達”っていうのはどう!?」
「そ、それはちょっと、誇張が過ぎるんじゃない?」
確かに語呂はいいかもしれないけれど、まだ私はひとつたりとも自分の魔導具を彼に使ってもらったことはないんだから、事実と食い違っている。
だがリラフェンはこの名前がよほど気に入ったのか、強烈に推して来た。
「そんぐらいいいじゃないの! あたしたちがディクリド様に色々助けてもらってるのは真実なんだから、見逃してもらえるわよ。それにこのお店が流行ればいずれ、ハーメルシーズ城でも魔導具を使い始めるようになるでしょ? そうなった時、ディクリド様が、近しいあんたの作った魔導具を皆に勧めるのは明白じゃない! どっちが先だって変わらないってば!」
「ああ、もう……わかった。それじゃ、ディクリド様がお認めになられたらね」



