魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)


 あっという間に時間は過ぎて、もう窓からは茜が射す。今日もまた一日が終わるのだ。私は外に出ると新鮮な空気を吸い、気持ちよく体を伸ばした。
 以前はあんなに働くことが苦痛だったのに……今はこうしていられることが楽しいし、わくわくしている。そしてこれからは、今まで自分の培ってきた技術で、誰かの役に立つことができる。それを思えば、いくらだって動いていられそうだ。

「お疲れ様。それじゃ今日は街に繰り出して、ぱーっと騒ぎましょうよ。この店の前途を祝して。……ああっ、そうだ!」

 そこで彼女は両手を胸の前でパチンと叩きつけた。

「肝心なこと話してなかったじゃない! どうすんの? この店の名前……」
「あ……」

 私はそれを聞かれて真顔になった。

「考えていなかったわ……」
「あちゃー……」