魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー（ザ・マーグレーヴス・パーベヤー）

　一気に実感が湧き、苦笑を交わす私たちだったが、もう賽は投げられた。ここからは、このハーメルシーズ領の人たちに貢献しつつ、このお店を長く続けられるように頑張っていくしかない……。

　お城を出る時に、カーテンやテーブルクロス、いただいたベッドに掛けるシーツなどといったものはベラさんを始めとした下働きの女性たちから餞別としていただいたし、これで差し当たって生活に必要なものは揃えることができた。

　私たちは荷解きをして自分たちの生活場所を整えた後、相談しながらお店の内側を飾り付けていく。
　ここでお城で廃棄処分予定だった魔導具たちが役に立った。魔導具は一般人にも扱えるものだから、あえて危険な扱い方をしない限りは普通の家財道具と変わらない。念のため動力源となる魔石を外しておいた魔導具の中から、見栄えのいいものを選んで店舗部分の所々に置けば、それらはお洒落に店内の雰囲気を彩ってくれる。

「いい感じじゃない！　後はお店に出す魔導具を完成させて、接客の練習とか、値札や商品の説明書を書いたりとか色々やることはあるけど、もうすぐお店を開けるのね！　うー、楽しみになってきたわ！」

　両手を握って口元をむずむずさせ、その時を待ち侘びるリラフェンを見て私も期待が膨らんできた。