魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

「まあまあ。ひとつずつゆっくり片付けて行きましょうよ」

 ぼやく彼女を説き伏せて、ふたりで一緒にそれらを倉庫に納め、建物の掃除を再開してゆく。

(ここが、今日から私たちの家になるんだな……)

 自分の家を持つというのは、私にとって初めての経験だ。今までは、実家でも、あの使用人小屋でも割り当てられた小さな部屋が、私だけの自由な空間だった。その範囲がリラフェンが一緒に住むとはいえ、これからは大きく広がるのだ。

(どんな生活になるのかな……ふふ)

 それを思うと弾む気持ちは抑えられず、ぴかぴかに拭いた窓に映る自分の顔は、だらしなく緩んでいるのだった。



 お城の下働きで培った清掃の腕前をいかんなく発揮した私たちは、その日の晩までになんとか建物を住める状態に復旧させた。
 夜は綺麗になった床に毛布を敷くと隣り合って眠り……そして翌朝、建物の全体を見て改めて各部屋の割り当てを決めていく。