魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

「そんな予定あったかしら。その爺ちゃんっていうのは……」
「いっけない。うちはルシルって言いまして、鍛冶屋のオルジの孫娘なんです」
「ああ~」

 ということはだ。先々に備えてオルジさんに少しずつ発注をかけていた術式盤や、それを内蔵する外見の什器とか、魔石とかを届けに来てくれたのだ。

 なるべく早くとは言っていたものの、こんなに急いで持って来てくれるとは思いもしなかった。私が納得すると、彼女は荷物をどんどん玄関の脇に積んでいく。鍛冶屋の娘ということで鍛錬を積んでいるのか、見た目に寄らず力持ちだ。

「わざわざありがとう。オルジさんにもまた伺うからよろしくって言っておいてくれます?」
「こちらこそ。爺ちゃんも年がいってもうそろそろ引退するか~なんてぼやいてたけど、最近また仕事に張り合いが出てきたみたいで、サンジュさんたちのおかげです。ここでお店を開くんですよね? どんな感じになるのか、楽しみにしてますっ! それじゃ!」

 彼女は大きく手を振ると荷車を引いて去っていく。これからよろしくと手を振り返して私がそれを見送ると、奥から出てきたリラフェンが玄関脇の荷物を見て、目を丸くした。

「まぁた荷物が増えてんじゃない! 勘弁してよ……」