あ、あ、あ!
笑った。
彼が、あの日のように。
ううん、ちょっと違う。
はにかんだような、照れた微笑みだ。
彼は、途切れ途切れに、言葉を告げる。
手と、腕と、指を、私にもわかりやすいように、大きな動きで言葉へと組み立てながら。
わかる、わかる、ちゃんとわかるよ!!
『さ か き 、 た だ し』
彼は、ごめんね、と顔の前で手を合わせると、私のコートのポケットから直接レターセットを探り当てて、目を細めると、すごくすごく大切な宝物のように、自分の胸に押し付けてあたためていた。
私なんかからのラブレターに、そんなにロマンチックなことをされて、照れてしまって、何よりも受け取ってもらえたことが嬉しくて、慌ててしまう。
さかき君は、「家まで、送ります」と、手話と言葉で私に気を遣ってくれた。
聞き慣れない、音を知らないひとが話す声は、正しくなくても、とても優しくてあたたかな色彩だ。
混ざり合う幾つかの音色から拾い上げる、私にくれる文字を、直感と仕草で、丁寧に分けて見つけ出す。
こくん、と頷いて、私はさかき君の隣に立つと、歩幅を合わせてくれたので、息切れせずに歩く。



