「レモン½で食べよ!」


 珍しく街に寄らず、ホノカとルミには母の手伝いがあると嘘までついて、猛ダッシュで家まで帰って来た。

 実際には、母は夕飯の買い物に出ているようで、家には鍵がかかっており、中に入ってキッチンを覗けば、テーブルの上には私が朝、わざと忘れて行った弁当がランチョンマットにくるまれたまま置いてあった。

 学校指定の鞄からスマホと、ノートの切れ端を取り出して、キッチンテーブルの椅子に腰かける。

 ありがとう、ホノカ!!

 別に威圧感があったとは思っていないけど、側に立っていてくれただけでも効果があったみたいだ。
 実際に、戸田くんに「香歩に、連絡先教えて欲しいな」と伝えたのはルミの方だった。
 私はルミの隣で「嫌だったらいいよ、急にごめんね」と、ひたすら謝っていた。
 こんなにすんなりと教えてもらえるのだったら、もっと早く聞いておけば良かった!

 メモされているのは、ラインのIDで、走り書きなので何度か読み間違えながらも、最終的には戸田くんのアイコンらしきものを発見することが出来た。
 朝焼けの綺麗な空のアイコンだ。
 緊張しながら、よろしくね、のスタンプを一つだけ送信すると、しばらく既読がつかないかどうかジッと待っていた。

 …ちっとも、既読にはならないまま、キッチンの窓からは西日が射し込み、私をジリジリと焦がした。