過去夢の少女

☆☆☆

「おはよう絵梨」
キッチンに立つお母さんが振り向いて声をかけてきた。
「お、おはよう……」

本当は1時間も前に起きてこっそりシャワーで汗を流してきたのだけれど、それは言わないでおいた。

すでに準備されている朝食は食パンと卵焼きだ。
私は自分の椅子に座ってお母さんの顔を盗み見た。
今日見た夢は明らかな過去夢だった。

つまり、すでに起こってしまった出来事。
だけど今目の前にいるお母さんが人を殺してきたようにはもちろん見えなかった。

むしろ昨日の夜同様に若々しくさえ見える。
「お、お母さん、最近機嫌が良さそうだね?」

なにげなくそう質問してみると、お母さんがパッと花を咲かせたように笑った。

魅力的な笑顔につい魅入ってしまう。
昨日は彼氏でもできたんじゃないかと思っていたけれど、違う。

もっともっと大きな変化があった証拠になるような笑顔だった。
「そうねぇ? あったかもしれないわね?」