過去夢の少女

河村浩司がようやく声を発した時、すでにそれは弱々しいものになっていた。
きっと、もう叫び声を上げることはできないだろう。

お母さんは一旦動きを止めると、河村浩司に顔を近づけた。
『私の顔を忘れた? 私はあんたの顔を絶対に忘れないけど』

そう囁かれた河村浩司が大きく目を見開いた。
同時に恐怖の色が滲んでくる。
『す、すまなかった』

お母さんは河村浩司に最後まで謝罪の言葉を言わせなかった。
握りしめた包丁が相手の首に突き立てられていたのだ。

お母さんは両手で包丁を握りしめ、突き刺さった首元をマジマジと見つめた。
そして、微笑んだのだ。

若く愛らしい頃のような笑顔で。
『さようなら』

そして、包丁を引き抜いた……。