過去夢の少女

もう夜中だし、家人はすでに眠っているはずだけれどお母さんは迷うこと無く玄関へ向かった。
そしてしっかりと施錠されていることを確認すると、今度は庭へと回り込んだのだ。

庭側へ回ると大きな窓があり、網戸になって中のカーテンを揺らしている。
どうやらそこは寝室のようで、カーテンが大きく揺れるたびに畳に布団を引いて寝ている男性の顔が見えた。

私はその男性を知らないはずなのに、すぐに河村浩司だと理解した。
夢で見てきた若い頃とは違い、随分と体が大きくなって白髪も増えているようだ。

それでも面影はあったし、これはお母さんの過去夢だから、やはり自分の心とがリンクして理解できたんだろうと思う。

お母さんはそっと網戸に近づいて中の様子を確認した。
夫婦は別々で眠っているのだろう、その部屋には河村浩司の姿しかなかった。

それを確認したお母さんは握りしめているものを握り直した。

そう、お母さんはアパートを出たときからずっとそれを握りしめていたのだ。

月明かりに光る、三徳包丁を。
お母さんが音を立てないように網戸を開ける。