過去夢の少女

☆☆☆

職員室に入ると、そこには数人の先生たちしかいなかった。
「ふたりとも、こっちに来て」

先生に手招きされてコーヒーの香りが漂っている教室内に足を踏み入れる。
先生に近づくと、その顔が険しいことに気がついた。

「これはあなたたちが準備したものなの?」
そう言って机の上に出したのはノートの切れ端と体育館倉庫の鍵だった。

切れ端には私が左手で書いた文字が踊っている。
ゴクリと思わずつばを飲み込んでしまった。

飯田はこれが私たちが準備したものだと気がついて、河村結夏を助けることにしたのかもしれない。

でも、どうしてバレたんだろう?
筆跡は変えてあるのに。

なにも言えずに黙り込んでいる内に、背中に冷や汗が流れていった。
「いいえ、違います」
代わりに答えたのは恵だった。

先生の目をまっすぐに見て、言いよどむこともなく言い切る。
「本当に?」