私の1日は、彼の楽しそうな笑い声から始まる。
朝、人気の少ない教室で静かに課題をしていると、急に廊下が騒がしくなった。
「こいつまじでつえーの! ちょっとはおれにわけろって」
「ゲームのうまさは生まれつきだからね。お前じゃ無理無理」
「じゃ、今日も21時から! 紘貴に絶対勝ってやる!!」
"紘貴"。その名前にぴくっと身体が反応する。
ここ、1年5組の教室のドアが音を立てて開いた。
ぞろぞろと、数人の男子生徒たちが中に入ってくる。
「うわまって、英語あんじゃん! 課題やってねえ。しかもこの前答えの冊子無くしたし。写せねーじゃん」
「俺の貸そうか?」
盗み聞きはいけないこと……だけど、聞こうとしなくても勝手に耳に入ってくる。
特に、あなたの柔らかい声色が。
私のシャーペンを持つ手は止まっていた。課題は進まないまま、男子たち……いや、彼の声に身体全体の意識が集中する。



