前の中間テストのランキングで、一応一位だった私だけど、秋葉は約200人中150位で、ちょっと…っていう感じの成績表。
頑張ったらすごくできるのに…基本的にやろうとしないから…すごく勿体無いと思う。
いろんな趣味などに注ぐ情熱を、勉強に注げばいいのに…って見ててすごく焦ったい。
「ふん…なんとなく、あんなのに情熱かける意味がない気がするんだよね〜…今頑張っても遅いし」
「どうして? 秋葉ならすぐ追いつくと思うけど…」
「あー…まあ、最近色々大変、でさ…」
「そっか…」
頷きはしたけど、他は何にもリアクションをしないでおいた。
流石に親友だからって、何でもかんでも踏み込んでいいわけじゃない。それぞれ、家庭の事情というものがある。
だから、私も秋葉にそこまで踏み込まないし、秋葉もそこまで踏み込んでこない。
暗黙の了解、というものだ。
「実紀」
「ん? 何?」
秋葉が、ココアをかき混ぜて、どこか遠くを見ながら、ぼそっと言った。
「…桜井のこと…好き?」
「…⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
ごほっとむせる。
「ななな、何急にっ」
飲んでたカフェラテを吹き出しそうになったじゃんっ!
「いいから」
「ええ…」
でも、親友として色々わかっちゃうよね…だって、私だってわかる。秋葉のこと、色々と。
今は…完全にわかった瞳をしている。でも、私の口から聞きたいって顔だ。
「…うん。好き」
倉くんのこと…本気で好き。
「…そっか」
秋葉…?
一瞬で、何もないところを鋭い目で睨んでいる秋葉。
「どうしたの…?」
「いや? 暗殺してやろうかと思って」
ええ…⁉︎ 誰を⁉︎ どうやって⁉︎
「…実紀は、私のだから! あいつみたいなのに、渡すか!」
「秋葉…?」
ぎゅうっと抱きしめられて、ちょっと苦しい。
「秋葉…?」
「大好きっ」
「もちろん。私も」
「あんなやつより、私の方が好きだよね?」
…ん?
「あんなやつ…?」
「桜井倉! なんかより! 私の方が! 好きだよね⁉︎」
「う…うん⁉︎」
どうして今、倉くんの名前が⁉︎ そして、何に張り合ってる⁉︎
もしかして…。
秋葉と他の子が仲良くしているのを見ると、自然と嫉妬した。
秋葉は私の親友なのにって、何度も思った。
もし、それだったら…嬉しいなっ…。
なんて、あまりにも虫が良すぎるよねっ…。
「うん、だって倉くんに告白する予定なんてないから」
「…っ」
秋葉が、すごく苦しそうな顔になった。
「…実紀。私…すごく、実紀とられたくないよ? あんなやつに」
「…?」
「でもさ…私、私…、実紀の親友だから…実紀の恋、応援してあげたい」
秋葉…。
「私も…多分同じ立場だったら、倉くんに嫉妬してたな」
「実紀…」
私の秋葉を取らないでって、思って、きっと応援もできなかった。
私のただの我儘で、秋葉を縛りつけてたと思う。
「私、それで秋葉のこと応援できなかったと思う。私、ずるい。だから…秋葉は…優しいね」
精一杯の笑顔を浮かべて…今にも泣きそうな秋葉を、いつもの笑顔に戻してあげたかった。
「違う…実紀…私は、何かきっかけがないと、こんな風に動けなくて…」
「きっかけ?」
病気のことかな…?
「…実紀。大好き。私と一ヶ月、いっぱい遊んで、一ヶ月後、桜井に告白して」
「秋葉…」
「私、いっぱい実紀のこと可愛くしてあげるから」
秋葉…優しい…。
ジーンと心に秋葉の優しさが沁みた。
「…ありがとう。…でも…どうして一ヶ月後?」
「あー…」
ちょっと秋葉の声が濁った。
「あっ、ごめん、言いたくなかったらいいんだよっ」
言いたくないことを、無理に言わせたいわけじゃない。
「っ、実紀…可愛い…」
「へ、へぇっ…⁉︎」
そんな…お世辞言わしちゃって…ごめんなさいっ…。
ーその日から、秋葉の様子がちょっとずつ違くなってきた。



