2人も起きていて、さっき夢で会っていたなんて信じられない。
っていうか…あれ、本当に夢?
ただ、私が勘違いして、夢の中で幻覚呼び起こしちゃった系じゃない?
「あっ、やばい、あとちょっとで授業始まる…! 急ごう!」
「秋葉…!」
秋葉は、何事もなかったかのような感じで、普通。
「ん? どうしたの実紀」
「秋葉…助けてくれて、ありがとう」
秋葉の目が大きくなる。
「…私が実紀を守るなんて、当たり前じゃん。親友でしょ?」
「…うん! ありがとう」
やっぱり…ただの夢じゃ、なかったのかな。いや…秋葉、「何言ってんの?」って思いながらも合わせてくれてる?
天使…私の感情、失くさなかった。
…意地でも失くすと思ってたのに…まあ、上司が来てそれどころじゃなかったのかな…。
「あ、そうだ実紀」
秋葉は倉くんをちらりと一瞥してから、私を見た。
「ね、実紀。これから一ヶ月くらい、私といっぱい遊ばない?」
「えっ?」
一ヶ月…。
「一ヶ月って、30日くらい?」
「うん」
「じゃあ倉くんも…」
「ダメ〜てか一生くんな」
倉くんが行きたいって言ったわけじゃないのに、秋葉はキレて倉くんにダメ出しをしている。
「別に…2人の邪魔しようとしてるわけじゃないし、行ってこいよ」
そう言って、倉くんは昇降口に歩いていった。
「う、うん! 秋葉、どこ行くの?」
「まだ決めてない。実紀が行きたいところに15日、私が行きたいところに15日行こうかなって。あ、他の人は誘わないでね」
「うん!」
どうして急に…? って思ったけど、秋葉と遊ぶなんて楽しいことはない。
「今日は…実紀が行きたいところに行こっ」
「うん!」
今日か…どこに行こうかなっ…。
「あ、お小遣いはめっちゃあるから」
「あ、うん。私もあるよっ」
「うわっ、実紀、お金持ちそう〜!」
「いや、そこまでじゃないよ。あ…あの新しくできた駅前のカフェ、行きたいなっ…!」
みんなよく行っているみたいだった駅前のカフェが、美味しいらしいから、ずっと行きたいって思っていた。
「うん、行こう! 私も行きたいって思ってた! いい機会〜!」
「うんっ。じゃあ、今日帰りに寄ろっ」
「賛成!」
秋葉は、最近病気になっていたから、多分寂しかったんだろうなっ…。
私もちゃっかり楽しませて貰うけど、秋葉をちゃんと楽しませなきゃっ、親友として!
** **
「えっ、そうなの⁉︎ 大変な病気だったんだね⁉︎」
「そうそう。5日で治ったのが奇跡だって言われた!」
「それはすごいね⁉︎」
「うん! 先生、だいぶベテランの先生だったから、5日で治った人は見たことないって言われた時、嘘って思った!」
私たちはカフェで、秋葉がなっていた病気について話している。
「今はめっちゃ元気! もう一回ならないように薬は飲んでるけど! いや〜、この薬がまた不味くてさ〜」
「うわっ、病気との闘いの後に不味さとの闘い!」
「ほんとそれ! きついよっ」
薬って、本当に不味いよね…!
「んっ、このココア美味しい!」
「ほんと? 私のカフェラテも美味しいよ」
カフェラテをぐるぐるかき混ぜながら私は言った。
「え〜、私苦いのダメ〜」
「あはは…甘党だもんね」
「うん! 甘いものは世界を救う!」
秋葉が頼んだココアの上には、甘いホイップクリームがのっている。
甘そうっ…。
「私も甘いものは好きだな〜。でも、カフェラテあったらついつい頼んじゃう」
「ええっ…私がカフェラテ飲んだら、火を吹くよ?」
「え、火吹くの辛いものじゃないの? 苦いので吹くの?」
苦いもので火を吹きそうなんてことは聞いたことがない。
「あ…でも、そんくらい苦いのは無理! ちょっと…」
「でも秋葉、大きくなったら味覚変わって飲めるようになるかもしれないよ?」
秋葉はいつかは飲める気がする。もちろん、確証はないけど。
「大きくなったら…」
どうしたの…?
「でも、味覚変わって苦いの飲めるようになるのは老化って聞いたよ?」
「えっ、私もう老化してるの⁉︎ 早くない?」
「嘘嘘、実紀はまだ老化するには早いって!」
秋葉が爆笑しながらココアを一口飲む。
「実紀、小さい頃からそういうの大丈夫だったし。ほんとびっくりした…苦いの飲んでもすん…ってしてたの。こうやって」
「ええっ、なんでそんなの覚えてるの⁉︎ そんなどうでもいいこと覚えてないで、勉強した内容覚えなよ!」
「あはっ、確かにそうだ…」
秋葉が苦笑いする。
「もう…」
秋葉は成績が悪いわけではないけど、よくもない。



