「——私ならここにいるけど?」
え?
いつもの涼しげな、よく通る声。
ーあ、き?
「どうして…?」
「は…⁉︎ 何ここ! ってか、実紀…⁉︎」
当たり前だけど、秋葉は急に目の前に広がった雲の上の景色、私と倉くんがいること、天使らしき格好した人がいること、そして私が燃えかけている光景に目を白黒させた。
でも、すぐ瞳を怒りに燃えさせて、天使に突っかかっていった。
「私の実紀に何した⁉︎」
怒りの形相で天使を一発殴った。
あれ…ちょっと、火が弱まった気が…。
何度も何度も天使を殴っている。
暴力はダメ…って思ったけど、天使が私にやっていることはひょっとしたら殺人になりかねない。一応正当防衛として成り立つのかもしれない。
少しずつ息苦しさも減っていく。
私は、すぐに火を跨いで、生還した。
「秋葉っ…何でここに⁉︎」
「こっちの台詞! ただの夢だったとしても、私は実紀を助けてたからね!」
天使が苦々しい顔で私たちを眺めていた。
「正当な罰なんですけどー…?」
「どこが。行き過ぎてる」
秋葉の声色が、だいぶ低い。
あちゃー…これ、秋葉のスイッチ入れちゃった系…。
秋葉はスイッチが入ると、一ヶ月くらいスイッチが切れない。まあでも、もう多分この2人が会うことはないはず。
うんうんと隣で倉くんも頷いている。か、可愛い…かもしれない。
「でもっ「そこまで」
え?
だいぶ大人な声が、天使の言葉を遮る。
「あっ…」
「久しぶり」
「お久しぶりですー」
天使の…この調子だと、上司?
こんなサイコパスを育てた人⁉︎ 上司、やばい⁉︎
ーって。
めっちゃ人良さそうな天使っ…ていうか、この人天使⁉︎ 天使の羽とかつけてない! あんまり見ない白いスーツ着てる人だ…超爽やか系…の男性!
「あ、初めまして。こいつの上司。よろしく」
笑顔まで爽やかっ。
「「「は、初めまして…」」」
「はは、息ぴったりだねっ。ごめんねー、こいつ暴走すると止まんなくて。殺人未遂だったでしょ?」
「は、はい…」
本気で、一瞬死んだかと思った…。
「ふん、正当な罰を与えたまでです」
「正当じゃないな…やり過ぎは天使じゃなくて悪魔だよ」
「別にどっちでも〜。悪魔の方が自分でもあってると思います〜」
うーん…天使のキャラ変わってる気がするのは気のせいかな…?
「…じゃっ、ごめん、こいつが勝手に呼び出して。学校行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい!」
「「「い、行ってきます…」」」
天使2人に行ってらっしゃいって言われるなんて…ちょっと違和感…。
** **
「…っ!」
目が開いた瞬間、がばっと体を起こす。
近くに…倉くんと、秋葉!



