どんな君でも、溺愛します。



倉くんが眉を(ひそ)める。

「まあ、色々突っ込みたい所はあるけどさ…まずは実紀」


「…っ」

だから…結局、こうなるから、言いたくなかった。


できることなら永遠に、この調子で感情を取り戻して、笑っていたかった。


「ねえ。

何で、取り戻したって、報告しなかったの? 言ったよね? なんかあったら言えって」




「…言われてない。質問会開くとしか」


「ふふっ、そっか」


そう言って笑った天使が…すごく怖く見えた。


「でもさ…他の人に言うのはダメって言ったよね? 何? 何で? 答えて」


「…っ」

「いや…俺が鎌をかけただけだし」


倉、くん…。


「でも何とかして誤魔化せたじゃん? やっぱアホだね、実紀って」


ぐさぐさっと言葉の矢が胸に突き刺さってくる。

ダメだ…聞きたくないなんて思っちゃ。こうなるってこと…私だってわかってた。それこそ…倉くんにバレた時に、もう。


「天使…だって」


「何?」

「記憶消すとか言ってたけど…結局消えてなかったじゃん! 天使だって同類! 共犯!」

そ、う。ずっとこれをブーイングしたかった。

「ふーん、そっか」


ーボッ


「っ⁉︎」


私の周りの雲だけ…燃え、てる?


「てっ…天使⁉︎」


「確かに、私だってできなかったよ? でも私だってびっくりしたんだもん。魔法効かない人間なんているんだな〜って」


炎が、どんどん大きくなっていく。


その向こうで…怖い笑みを浮かべる、天使がいた。


「でもさ。私とか、神様の立場にもなってみなよ。バラす人だったらどうしてた? どうなってた? 私たちのことバレバレじゃん。何? どうしてくれるの?」

「えっ…」

「流石に命を賭けて…償ってくれるよね?」

ーゾッ


その色のない瞳を見て、思った。


本気だ。本気で、天使は私を殺して、“赤城実紀”の存在をなかったことにしようとしているんだ。


「実紀!」

「あ、飛び込んじゃう? イケメンくん。生贄(いけにえ)が増えて嬉しいな〜」


「ちょ、待って!」

今、完全にホラー小説化しようとしてない…⁉︎


サイコパスめ…!


「言っとくけど、火の中に入ったら絶対助からないからね? 焼き尽くす」

ゾッと、もう一度背筋が凍った。


「秋葉…!」


最後に頼るのは、秋葉しかいない。

別に、秋葉が本当に来るとは、思ってはいない。


でも…死ぬ前には、秋葉のことを考えていたかった。


「来るわけないじゃん、友達ちゃんが」



天使が嘲笑ってきた。