どんな君でも、溺愛します。




「…ふーん」


軽っ…。


「…っ⁉︎」


突如現れて、私を襲ってきた頭痛と、心臓の異常な動き。


そして、自分でもだいぶやばいと思うほどの体調不良。



「そ…くっ」


倉…くんっ…。


もう声も出にくくなるほど息が詰まっていた。


「え、っ…」

倉くんも…頭を抱えていた。

「み…きっ」

「倉っ…く、ん⁉︎」


なんで…倉くんも?


こんなに急に体調不良が一気に来ることはなかった。


来るとしても、ちょっとずつ体調不良に侵食されていく感覚。

なのに…何でこんな急に…っ?

消えかける意識を繋ぎ止めるのに、必死になっていく。

目の前が真っ暗になりそうになった時、ギリギリで何かのドンっという音により意識が繋がれる。


なんの、音…?


…っ、倉、くん…⁉︎

たお、れて…?


「倉…くんっ!」


そう叫んだ瞬間に、いつもの、視界が黒く塗り潰されていくような意識の消え方なんかじゃなくて、一気に前が真っ暗になって、私は意識を手放した。



** **



「ん…」


視界が…白い。


白…白?


き、り…?


霧っ⁉︎

バッと目の前の霧を払う。


雲の、上。


あ…見ない様に気を付けてたんだけどなぁ…だって、天使にブーイングしたかったけど…私、感情取り戻しちゃったし…。


「…実紀?」


「え?」


最近聞き慣れてきた声がして、私は反射的に振り向いた。


「倉…くん?」


な…。

「何で、倉くんがここにっ…⁉︎」


「俺も知らん」

ええっ…私が来ることはあるかもしれないけど…どこをどう間違ったら倉くんも来ちゃうの?


記憶を辿っていく。


そうだ…2人して謎の体調不良に襲われたんだ。有り得ないほどスピードで、突如。


「まさ、か」


私は、私の顔色が真っ青になっていくのを自覚した。


「そう、そのまさかだよ」

やっぱり…。


「てん、し」


「え…こいつが…?」


倉くんが目を見開いて、天使を二度見する。


バッと後ろを振り向いた。


いつもと同じ…いや、違う? ちょっといつもと違うような笑みを浮かべた天使。


「やっほっ、久しぶり〜」


ちょっと無邪気で…きっと普通に、何にも知らない人が見たら、可愛いと思うような笑顔で、私に手を振る。


「…っ」

天使のこの笑みは、いつも、感情が読めなくて、掴めない。


私が倉くんに見せたことがないほど強張った表情をしたからか、倉くんが視界の端、訝しげに私を見てきた。


「ね〜…初めまして、キミ」


にこっとちゃんと倉くんへの挨拶も忘れていない天使。


「初め、まして」


頭から爪先までじいっと観察している倉くんに向かって、天使はふっと笑みを向けた。


「うん、ちょっとこっちは初めましてって気はしないんだけどね」


「はっ?」