急に、私が想っている倉くんの名前が出てきて、バクンっと一回心臓が異常な動きを見せた。
「う、うん。そうだね…」
平常心、平常心っ。
とりあえずみんなには、動揺を悟られないように。
「それで…ずっと、赤城さんのこと見てて思ったの。最近、赤城さん、よく笑うようになった。だから、感情がないっていうのも、間違いだろうなって…」
笑うように…。
「そもそも、よく考えればわかる話だった。感情がない人なんて、いないし。ただ、私がストレス発散したくて、赤城さんに八つ当たりしちゃっただけ。感情がなさそうに見えたのも、色々クラス内がギスギスしてたせいかなって…私が、私が気づけなかったから…本当に…ごめんなさいっ…!」
彼女はもう一度、ポニーテールを揺らした。
「気にしないで」
そういうと、他の人たちがあからさまにホッとした顔になる。
もちろん、女の子も。
「あ、でもみんなは、許さないから」
他の人たちにそう捨てた。
「えっ…」
だってあなたたち、謝ってない。
別にそこまで怒ることでもないかなと思ったけど、今考えてみたら私、辛い。
なーんて、自惚れてて、自分に甘すぎるけど…。
「「「ご…ごめんなさいっ!」」」
一斉にバッと頭を下げられる。
う、うーん…大事にしすぎた?
「ううん。謝ってくれてありがとう」
これからもよろしくという意味で、にこっと笑う。
「…!」
「? どうしたの?」
「いえ! ではこれでー‼︎」
は、速いっ。
だーっとクラスのみんなが昇降口へ駆けて行く。
「みんな速いな…」
「あんなにハブられてたのに、よく許せるな。ま、そこが実紀のいいところでもあるけど」
「へっ⁉︎」
口から心臓が飛び出そうになった。
「そ、倉くん⁉︎」
「よー」
かるーく茂みから出てきた倉くん。
「い、いたの⁉︎」
「だって、実紀が襲われてたらやじゃん?」
え。
私のために、わざわざここまで…って、流石に自意識過剰!
「あ、あああありがとう…」
「ん」
第一印象から思った。
倉くんは、意外とクールなんだなぁ。
クラスでは明るいのに、2人きりになったら急にクールになる。
ふふっ、ギャップで面白いかも。
まっ、私はどっちの倉くんも、すっ…だけどね⁉︎
改めて思うと、私結構大胆なこと思い出しちゃったんじゃない⁉︎
私…倉くんが、本当に好きっ!
だいぶ距離縮まった気が…いやいやっ、自意識過剰すぎるよねっ!



