感情を失って、19日。
まあ、今は取り戻しちゃってるけど…。
秋葉、最近めっちゃやばい病気をして入院生活をしていたらしい。
そして…。
ーガラっ
教室の扉が勢いよく開いて、とある男子が入ってくる。
「はよー」
「おはよう…倉、くん」
倉くんに笑みを返す。
もう、倉くんには全て思い出したって、全部包み隠さず話した。
天使には言ってないことも、天使のことも…天使の言いつけを破って。
だって、倉くんはみんなにバラすようなことしないから。
倉くんが、最近無遅刻無欠席で学校に来ている。
問題児だったのに…って、みんなびっくりしている。
それが、もし私のためだったらっ…いや、流石に自意識過剰のやばいやつ! いやでも…嬉しいなっ…妄想で喜べるって、私以外と単純なのかな…は、恥ずかしいっ…倉くんに、バレてないといいけど…。
こないだ、倉くんへの想いを自覚した時から、にやにやが止まらないっ…どうしようっ、自意識過剰以外にもにやにやしててやばいやつ認定されちゃうっ、でも止めることは不可能…⁉︎ …私、気持ち悪いっ…。
「赤城さん、ちょっといい?」
「え…私?」
倉くんが隣に座ったと共に、クラスメイトの殆どの人が私の周りに集まってきた。
「い、いいけど…」
「ありがとう!」
集団についていく私は…すごく心臓がっ…やばいっ。
私…孤立してたはずなのにっ。
倉くんは呼ばないってことは、私、殴られる⁉︎ また恨み買っちゃった⁉︎
いそいそとついていったら…裏庭。
…なんか…呼び出すのに定番な場所だ…。
こんなところにクラスメイト4分の3くらいがやってきて、私に何をしたいの…?
「赤城さん」
「な…何?」
いつもクラスを引っ張ってくれているリーダー的存在の女の子が、口を開いた。
「…ごめんなさい!」
パッと揺れるポニーテール。
「……え?」
私は呆然としながら、ゆらゆら揺れるポニーテールと、頭を下げた彼女を交互に見る。
急に、何…?
「私たち、勘違いしてた。赤城さんは人間の感情がなくて、私たちにイラついてて…私たちをいじめようとしてるのかと思ってた。でも….違ったんだよね。本当に…ごめんなさい」
もう一度、深々と頭を下げられ、本当に困惑した。
どうして急に…?
「どうして、今…?」
「あ…」
女の子はもじもじとスカートの裾を握りしめて、腹を決めたように顔を上げて、私をはっきりと見据えた。
「…桜井くん、最近よく来てるでしょ?」



