どんな君でも、溺愛します。





** **


「きゃああああっ離して!」

「うるせー!」


「離してって言ってんじゃん誘拐犯!」

「いてえ!」

秋葉はバシッと繋がれた手を叩く。


「よしっ…ついたぞ」


「私、帰る」


秋葉が方向転換をした。


「ま、って、秋葉…」


「実紀…? 実紀は…サボっても別にいいの?」


私…?


「私は…」


「おいっ…」



倉くんが止めてくれる。

倉くんは、私が感情がないことを知ってるから、言わなくてもいいと、言ってくれているんだろう。



そのくらいわかる。



でも、私は何故か、どうしてもこの質問に答えたかった。


「私は…そりゃ、サボったら何だか…先生たちに顔向けできなくなりそうな気分になる」



うんうんと頷いてくれる秋葉。



私はその姿に少し肩の力が抜けた。



倉くんは屋上の鍵をちらちらと振って、私をじっと見てくれた。



「でも…屋上の景色は…すごく綺麗だった」


「「…」」



倉くんも秋葉も、少しだけ目を見開いた。



…綺麗って言う意味は、聞かないでおこう。


「だから…」

だから。


秋葉は、友達。


倉くんは…何でだろう、ずっとえがお? でいてほしい。


「だから、秋葉と、一緒に見たかった」



「私…?」


秋葉の大きい目が、更に大きく見開かれる。



「うん…。秋葉と一緒に、綺麗な空を見たかった」


「実紀…」


独り占めするんじゃなくて、秋葉と分かち合いたかった。



なぜかは、わからない。



でも…一緒に見たかった。


「もちろん、倉くんも一緒に」


2人は、だって……大切な友達だから。


たい、せつ。



大切の意味が、少しわかった気がした。


私は…わかっては、いけない存在なのに。


どうしても、奥の奥から感情が溢れ出してしまう。