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「きゃああああっ離して!」
「うるせー!」
「離してって言ってんじゃん誘拐犯!」
「いてえ!」
秋葉はバシッと繋がれた手を叩く。
「よしっ…ついたぞ」
「私、帰る」
秋葉が方向転換をした。
「ま、って、秋葉…」
「実紀…? 実紀は…サボっても別にいいの?」
私…?
「私は…」
「おいっ…」
倉くんが止めてくれる。
倉くんは、私が感情がないことを知ってるから、言わなくてもいいと、言ってくれているんだろう。
そのくらいわかる。
でも、私は何故か、どうしてもこの質問に答えたかった。
「私は…そりゃ、サボったら何だか…先生たちに顔向けできなくなりそうな気分になる」
うんうんと頷いてくれる秋葉。
私はその姿に少し肩の力が抜けた。
倉くんは屋上の鍵をちらちらと振って、私をじっと見てくれた。
「でも…屋上の景色は…すごく綺麗だった」
「「…」」
倉くんも秋葉も、少しだけ目を見開いた。
…綺麗って言う意味は、聞かないでおこう。
「だから…」
だから。
秋葉は、友達。
倉くんは…何でだろう、ずっとえがお? でいてほしい。
「だから、秋葉と、一緒に見たかった」
「私…?」
秋葉の大きい目が、更に大きく見開かれる。
「うん…。秋葉と一緒に、綺麗な空を見たかった」
「実紀…」
独り占めするんじゃなくて、秋葉と分かち合いたかった。
なぜかは、わからない。
でも…一緒に見たかった。
「もちろん、倉くんも一緒に」
2人は、だって……大切な友達だから。
たい、せつ。
大切の意味が、少しわかった気がした。
私は…わかっては、いけない存在なのに。
どうしても、奥の奥から感情が溢れ出してしまう。



