…っ。
「あー…ただ…やっぱやめて」
「えっ…」
ど、どっち…⁉︎ はっきりしてっ…。
「苗字じゃなくて良いから」
「…へ？」
「別に…名前で呼んでくれて、良いから」
な、まえ…？
「桜井くんの下の名前って…倉だった、よね？」
「今更？」
「…だってっ。全然会わないし、忘れるんだよっ」
「はぁん？」
うっ…なんでそんな口角を上げてるのっ。
そして…無意識に後退りしてしまう！ 何故⁉︎
「で、もっかい聞くけど」
桜…じゃない、倉…くん？ はこっちに体を向けた。
「感情がないってどんな感じ？」
「…うっ」
まさかのこれは…あやふやにできないのデスネ…。
「…認めます」
「偉い偉い」
ぱちぱちと拍手をしてくれる。ちょ…ちょっとどうでも良いかも…。
「…って言うか…どこまでが感情かわかんない。私が今考えていることは、本当に感情がないのかなって…」
だって、今だって、よくわからない感じが渦巻いてる。
倉くんが側にいると、何だか自分でも無意識にもっといたいなと思ってしまう。
これが感情じゃないとは…どうしても思えない。
「へえん」
体を乗り出して私の話を聞いてくれている。
「〜〜…っ、そっ、倉くん。そろそろ授業終わっちゃうよ⁉︎ 戻ろう！」
「ちぇっ。まあこれ以上サボって実紀の孤立がやばくなったらやばいし、戻るか」
倉くんが立ち上がる。
私の、ため…？
…っ、何でだろう…私、なんか天まで飛んでいけそう…。
