どんな君でも、溺愛します。





* *


私がだいぶ追い詰められていた、あの日。



桜井くんは、そんな私に気づいて、屋上の鍵を押し付けてきた。


渋々屋上へ行ってみたら、それはすごい青空だった。


空しか見えない景色だった。


その時…すごく、心がざわついたんだ。



…それから、桜井くんは一回も学校に来ていなかったけど…どうして今日…?



途端、桜井くんがバッと体を起こした。



…へっ、何っ…。


さっと荷物をまとめて、ずかずかとこっちに歩いてくる。



ええっ…?



桜井くんは、私の隣で立ち止まった。



「…」


無言で、私の隣の男の子を見ている桜井くん。



え…?



桜井くんはこそこそとその子に話しかけた。



…声が聞こえない…何を話しているんだろう…?


「はっ、はい! はいいッ…‼︎」



びくうっと肩を跳ね上がらせた隣の席の男の子は、慌てて荷物をまとめはじめた。




なに…なにが始まったの…⁉︎



男の子は肩を震わしながらさっきまで桜井くんが座っていた席へと走って逃げていった。





えっ…何、何でっ⁉︎




固まる私と、荷物を持ったまま立つ桜井くんとの間に、何とも言えない空気が流れる。



そのままどかっと隣に座った桜井くん。




ちょ…ここに本当に席替えしたのっ⁉︎