そう言うと、お母さんがこっちに走ってきた。眉をハの字にして。
「…どうしたの?」
訊ねると、お母さんの顔色が真っ青になった。
「ほらお父さん、実紀、最近無表情で無感情なのよ! これはおかしいわ! ぶつけても何も言わないし!」
あ、バレちゃう…。
バレるのは、絶対ダメだと、天使が言っていたのだ。
「う、ううん、最近表情筋使わなくなって」
「何でよ⁉︎」
「私の考え」
なんて言えば…? 咄嗟に思いついた事を口に出していた。
我ながら意味不明。
「どういう考えよ⁉︎」
まだ食い下がるか…。
もう言い訳が思いつかない。適当にその場しのぎの事を言うしかない…。
「…私が、こうしたほうが…って思ったの。何も言わないで」
「ダメよ。もう病院は予約取ってるから」
…?



