夕焼けを見て泣く秋葉。
『綺麗すぎてさ』
秋葉…?
忘れたくないと強く思った。
『実紀は…この瞬間を、絶対忘れないでね』
「…!」
秋葉。
そうだ…天使。
秋葉は、死んでいた。
49日間見てきた秋葉は、実際は見てはいけないものだった。だから、失われた。全ての49日間の記憶、全て、消えていった。
『忘れるのなんて…しょうがないから』
私は…忘れないでって言った秋葉を、裏切った。
忘れたくないって思った自分の思いを、裏切った。
私…何てことを、しちゃったんだろう。
ついに、涙が溢れた。
私の感情も、戻ってきた。
でも、その代わりに、秋葉が消えた。
どっちも、選ぶ権利なんて、私にはなかったんだ。
私がもし死ぬ方を選んでいたら、どうなっていたのかな。
私がどちらを選んでいても、どれだけ抗っても、きっと秋葉は死んでいた。
この世界は…残酷すぎる。
「倉くん…49日間見てきた秋葉は…見てはいけなかったんだよね?」
「…」
「私…秋葉に励まされてきたのに。誰よりも秋葉のことを思っていたのに。忘れるなんて…あんな天使の魔法で」
最低。秋葉は、最後まで私のことを考えてくれた。私が傷つかない道を選んできてくれていた。
自分が傷つこうとも、気にしないで、私のことばかりを。
「秋葉…っ」
泣き崩れた私を倉くんは、慰めようともしなかった。
ただ、自分も突っ立って、自分の記憶を取り戻していくだけだった。
そんな私たちを、ただただ、秋葉が綺麗だと泣いた夕焼けが照らしていた。



