** **
…今日で、感情を失った日から、29日目。
キリが悪いけど、今日は秋葉とショッピングモールに行く予定だ。
「ごめん実紀っ…ちょっと遅れちゃって…」
「全然大丈夫…! さっ、行こう…!」
鞄を肩にかけ直して、昇降口で靴に履き替える。
そして、持ってきていた交通系電子マネーでピッとお金を払って、バスに2人で乗り込む。
「私、本屋には行きたいなっ…」
「私も…! なんかちょっと気になる本があって! あと雑貨屋とか行きたいよね…!」
「確かに…!」
2人でお揃いのもの買ったりとか…もうお揃いはあるけど、新作お揃いができると嬉しいよねっ…。
「…秋葉〜」
「むにゃむにゃ…あとちょっと…」
つぎのバス停で降りなきゃいけないのに、あろうことか寝始めてしまった秋葉を起こすのに苦戦中。
「秋葉! 次でショッピングモールだよ!」
「はっ。実紀との買い物っ…って、寝てた⁉︎」
「それはもうがっつり!」
「がーん」
バスが停まって、慌てて2人で降りる。
他にも降りる人がいるみたいで、譲りながら降りていく。
「わあっ…」
ここは新しくできたショッピングモールで、私たちは来たことがなかった。
「す、すごい…大きいっ…」
自動ドアから中に入ると、色とりどりの装飾が視界いっぱいに広がる。
「すごい綺麗…!」
「開店してすぐだしね、色々凝ってる〜」
店内マップを見て、まずは本屋の場所を確かめてみる。
「あっ、2階の一番奥!」
「遠っ…」
秋葉が絶望の表情になる。
「秋葉、本のために頑張って!」
「うん! 最後らへんくらい、頑張る…!」
秋葉は謎にやる気アップさせて、力んでいる。
「ほらいこ!」
階段かエスカレーターどちらにするか私が迷っていると、秋葉が恐る恐る手を挙げた。
「エスカレーターがいいです…」
「えっ」
さっきまでやる気満々だったのに、もう歩くことを諦めちゃうの⁉︎
カチッと固まった私に向かって、秋葉はあははと乾いた笑みをこぼした。
** **
「本屋! 広い!」
「でか〜‼︎」
本屋が、見たことないくらい、大きい! 広い!
「これなら欲しい本がありそう…!」
わくわくしながら本屋の中に滑り込む。
「実紀〜待って!」
続いて秋葉も入ってくる。
「う〜…どこにあるのか見当もつかない!」
「じゃあ検索しよ?」
こういう大きい本屋にはほとんどある検索機!
「あっ、あった!」
「私も出てきたよ」
出てきた検索結果を握りしめて、場所が違うため別々にお目当ての本を探しにいく。
え〜っと、…あった! これだ!
お目当ての本を手に取って、待ち合わせ場所に行く。
あ、もう秋葉いる…早い!
「あった?」
「うん! あった! 試し読みしたけどめっちゃ面白かった〜」
秋葉が満面の笑みでお目当ての本を見せてくる。
「よかった! じゃあ買おう!」
私も本を持ちながら、レジへ向かった。
** **
「ねっ、ツーショット撮ろ!」
「ツーショット? いいよ!」
カメラで写真が撮れるスポットへ移動してきた私たちは、写真を撮ることにした。
「秋葉のスマホで撮ろ?」
「実紀のでいいよ〜! あとで送ってくれれば」
「…うん、わかった」
何でだろう、前は私が撮ろうとするだけで自分が撮りたいって言ってたのに。
秋葉も大人になったってことかなっ。
ーカシャッ
気持ちいいシャッター音と共に、私たちのツーショットが写真に収められる。
「やった〜、これで私と実紀の今日のラブラブお出かけの記録が残ったぞ〜!」
秋葉がスマホ片手に喜んで飛び跳ねている。
「そんなに記録残したいの?」
「うん! また今度お母さんに自慢するんだよね」
「あはは、秋葉ママ多分羨ましがらないと思うよ?」
「ううん、お父さんが羨ましがるよ! うちのお父さん、実紀大好きだから」
あはは…確かに、昔から秋葉のお父さんは、私に甘かったな…秋葉をほったらかして私を優先してたから秋葉がよく拗ねていた。それも、お父さんが自分を優先してくれないからじゃなくて、「実紀を特別扱いしていいのは私だけなんだから!」なんてお父さんに威嚇して、ちょっと軽い親子喧嘩になっていた。
「あ、これ送っとくね?」
「ありがと〜わーい!」
「次はどこ行く?」
「私はどこでもいいな…実紀決めて!」
えっ…。
「私…⁉︎」



