婚約破棄される令嬢の心は、断罪された王子様の手の中。

「言って置くが、俺はこれまでに浮気なんて、絶対にしていないぞ! どのご令嬢にも、一時だけの協力をお願いしていただけだ。ミレイユが俺のことを好きなら、止めてくれと言ってくれると思ったんだ。だが、君は黙って微笑むばかりで、何も言ってくれなかった」

 ジェレミアはこれまでの不安で悔しかった思いがこみ上げてしまったのか、涙で頬を濡らしていた。

 ……嘘でしょう。

 浮気者の婚約者を断罪するつもりだったけれど、こんなことになるなんて……浮気をしているかもしれない私が、何も言わなかったから、もっと不安になって傷つけていたってことなの?

 私は思わず彼に駆け寄って、ハンカチで涙を拭いた。両脇に居た兵士も、これはいけないと空気を読んだのか、ジェレミアの腕から手を放していた。

「ごめんなさい。ジェレミア。私が悪かったわ。何も言わなくて……本当にごめんなさい」

 私は彼の頬に手を置いて、そう言った。

 ジェレミアは私が嘘をついたと思って居たから、ずっと不安だったのだ。