婚約破棄される令嬢の心は、断罪された王子様の手の中。

「……違う。誰とも関係はしていない」

 しーんとした広間で、ジェレミアは真っ直ぐに私を見て言った。

「そんな訳ないでしょう。私以外のご令嬢と寄り添っているところを、これまでに数を数え切れないくらいに見たわ」

 あれを関係していないと言うなんて、ふざけているのかしら。

「それは、ミレイユだって同じだ。俺は見たんだ。俺と婚約していたのに、同じ年代の異性と何度も密会していただろう! だから、俺だって同じことをしたんだ!」

 その場に居る全員が、きょとんとした顔になった。私だって、そうだった。

 婚約者の私が浮気したから、浮気をしたですって……?

「待ってください。そんな事……ある訳がないわ」

 私はジェレミアのことが出会った時から好きだし、結婚するなら彼だと思っていた。彼以外の男の子に思いを寄せたことなんて、これまでに絶対になかったと言い切れる。

 戸惑った私の言葉に、ジェレミアは不満そうな表情で言った。