婚約破棄される令嬢の心は、断罪された王子様の手の中。

 チェーザレのとても低い声が聞こえて、私は首を横に振った。

 別に私は王太子と結婚したかった訳でもなくて、好きになったジェレミアと結婚したかっただけ……今はその夢もなくなってしまったけれど。

「いいえ。チェーザレ。始めて……私だって、言いたいこと……沢山あるんだから」

 私は両脇を押さえられていたジェレミアを、キッと睨み付けた。

 私と婚約していたくせに……色んなご令嬢と浮気して、信じられない! 自分の父親と、ここに集まった多くの貴族の前で恥をかけば良いんだわ!

「それでは、ミレイユの望みを叶えるようにしよう……それでは、ウィスタリア王国王太子ジェレミア・バートレット! 皇帝の名において、虚偽の証言は許さぬ。婚約者たるミレイユが居るのに、お前は彼女を蔑ろにし、多くの女性と関係したようだが、それは事実か? 真実のみを答えよ」

 思わぬ王太子の断罪劇のはじまりに、周囲の貴族たちは好奇の視線を隠せないようだった。

 私はというと完全に形勢逆転して始まった断罪劇に、胸がスッとする思いだった。ジェレミアを好きだったからこそ、浮気について許せない気持ちが強かったもの。