キミのために一生分の恋を歌う -first stage-

「小夏さん、ちょっといい?」

翌朝、洗面所をお借りして顔を洗っていると晴のお母さんから声をかけられた。

「あ、お母さん。どうしました?」
「ふふ、なんかいいわね、娘が帰ってきたみたい」
「陽菜さんのことも晴さんから聞いています。残念な事でした」
「ううん。今の和臣や晴がこんなに幸せそうなんだから、陽菜だって向こうで楽しくやってるわよ。まだ晴は寝てるでしょ?」
「はい」
「良かったら陽菜の部屋見てみる?」
「ぜひ」

お母さんと陽菜さんの部屋行き、陽菜さんの写真の前で私は手を合わせた。可愛らしくて、意志の強そうな目元が晴にもよく似ていた。部屋の中はぬいぐるみがたくさんで片隅にはピアノがあった。女の子らしい素敵な部屋だった。

「ありがとうね。陽菜もね、和臣や晴と一緒に音楽やってたのよ」
「え、そうなんですか?」
「和臣と晴はバイオリン。陽菜はピアノ。よく3人でセッションしてたのよ」

晴は和臣さんの真似ばかりしてたと言ってたから、晴もバイオリンにしたのかなと私は想像して微笑ましくなった。

「これがそのバイオリンよ」

お母さんによって陽菜さんの押し入れからバイオリンが取り出された。

「なんか色々思い出すみたいであんまり晴は触りたがらなくてね。でもあの子は絶対音感があってね。本当にすぐ覚えて上手に弾いていたのよ。良かったら小夏さんが貰ってくれないかな?」
「はい、ちょっと開けてみてもいいですか?」
「ええ。たまに私が手入れしてたけどまだ使えるかは……」

私はバイオリンとスマホを取り出して調律用のアプリを開く。
何回か弓を引き、音を合わせる。

「わぁ、綺麗な音。小夏さんはなんでも出来るのね」
「親がバイオリニストだったんです」
「そう。素敵ね」
「これ、遠慮なく借ります。あとお礼になるか分からないんですが。ここら辺でピアノを弾けるとこ知りませんか?」
「それならーー」

晴が寝ている間に、そこからの話はトントン拍子に進んだ。