キミのために一生分の恋を歌う -first stage-

車は静かに走り出した。夏の夕方。少し空が曇ってきて、もしかしたら夕立がくるかもしれない。

「晴さん、どこ行くの?」
「そうだね。秘密と言いたいけどそろそろ白状するかな。花火を見に行こうかなと」
「それって花火大会!? 今日あるんだ」
「うん。でも会場近くや人混みの中だと小夏の体調が心配だから、お店から見えるとこ予約しておいた」

さすが晴さん、花火大会の日にお店を予約なんて絶対大変なのにさらっとすごいこと言ってくるなぁと感心する。

「そんなに贅沢していいのかな」
「大丈夫だよ。お店の人が知り合いなんだ。遠慮はいらないよ」
「そうなんだ……」

お言葉に甘えて、と言おうって思ったけど。
こんなにいい機会を私なんかと一緒に過ごしていいのかと悩んでしまう。
一度も聞いてないから分からないけど、晴さんに好きな人や彼女が居ないとは限らない。

晴さんが私のことを多分、特別に思ってくれているのは解ってる。
でもそれが恋愛対象としてかどうかは、別の話なんじゃないかと思って。
花火とかはやっぱり恋人と行きたいのではと悩み始めてしまった。

「どうしたの? 花火は嫌だった?」
「違うよ。でもさ、晴さんと私は友達だけど、そうじゃなくてもっと他に一緒に行きたい人が居たんじゃないかなって」
「つまり彼女ってこと?」
「うん……」

私がしょんぼりと項垂れると、運転しながら晴さんは吹き出した。

「居ないよ、そんな人」
「えっそうなの?」
「と言うか仕事が忙し過ぎて探す暇もない」
「そうなんだ」
「何だか最近は心配で落ち着かない患者かつ友達が近くにいて忙しくなってるし」
「それって……私のことだよね」

晴さんは片手で返事の代わりに私の髪をくしゃっとした。
髪型が乱れるよ〜と言いながらも満更でもない気持ちで直す。

「だから何も気にするな。何度も言ってるけど、小夏には笑っていて欲しくて勝手にやってることだ」
「うん!」

そこで本当に一瞬夕立が通り過ぎて、すぐに晴れて再び空はオレンジ色に光りだした。
まるで私の不安な気持ちを洗い流して、背中を押してくれているようだった。