キミのために一生分の恋を歌う -first stage-

すみちゃんと別れてしばらくすると噴水池に到着する。この間、初めて諏訪野さんと出会ったベンチを目指すと、そこにはもうすでに諏訪野さんが座っていた。
約束もしてないのに、会える関係。

きっと私のことを待ってくれているんだ。
後ろ姿を見ただけでドキドキして、声をかける前に髪が乱れてないか、塗った色つきのリップが落ちていないかをスマホのインカメラで確認した。

「諏訪野さん。おはようございます」
「おはよう。……ねぇ小夏ってわかりやすいってよく言われない?」
「え? たった今、そこで友人とワンコにまで言われてきましたけど、超能力ですか」
「ハハ、なにそれ。ちがう。ほんとに面白いくらいわかりやすいから。まぁいいや座りなよ」

諏訪野さんが座るようにポンポンと隣を叩いたので、そこに腰を下ろす。

「毎日、ここまで散歩してるの?」
「はい、体力作りの一環で。あと歩いてると毎日同じ道でもちょっとずつ違う景色が見えるんですよ。そういう時にふと歌詞が浮かんだりするし」
「なるほどね。それで体調悪くてもここに来たと」
「え? そう見えますか」
「うん、昨日より悪く見える」

うーん、そこまでじゃないと思うんですけどと呟くと、諏訪野さんは私の胸の辺りを指さす。

「肩で息してるね。喘鳴も僅かだけどここからでも聞こえる。隠してるつもりなのかもしれないけど」
「ふう。じゃあそのつもりなんですから、そっとしておいて下さい」
「昨日はちゃんと寝られたの? 今日は薬飲んだ?」

まるでここは診察室みたいだなと私は苦笑する。

「寝ました。とってもいい気分で。薬は夜、コントローラー吸いましたけど、朝はまだ何も」
「そう。そのリップと髪型はこの間と違って可愛いけど、僕には全部正直に話してくれないと。これはお仕置きかな」
「お仕置きって?」
「隠そうとしたお仕置き。今日は僕とずっと一緒にいること」
「ふふ、何それ。全然お仕置きになってないです」

だって私、諏訪野さんと一緒に居られると嬉しいって思っちゃうから。
そう? と諏訪野さんは応えると、立ち上がり手を伸ばしてきた。私はその大きな手を握り返した。