キミのために一生分の恋を歌う -first stage-

それは3万人以上が収容できるドーム型施設が完成する記念のイベントで。8月末に行われる。
しかもその場所は私と小春にとって故郷のような場所だった。
依頼されたのはそこでのライブ披露。

「さ、3万人だよ。コレ。bihukaの為に集まる訳ないよ」
「お姉ちゃん。上手くいくかいかないかなんてやってみなきゃ分からないよ。それにこのイベントはドームのオープン記念のものなんだから、お姉ちゃんが来なくてもドームが見たくてみんな来る。例えお姉ちゃんが断ったって代わりの人気歌手が担当するだけ。そしてbihukaはそのままみんなに忘れ去られる」
「それは……嫌だよ」
「今ならまだ依頼を受けられる。どうする?」
「分かった。私の最初で最後のドーム公演はここにしたい。でもホントはそれで終わりにしたくなんかない……ずっと小春とふたりで……」
「うん……うん!!」

私が決意と本音を同時に口にすると、小春は感極まって泣き出した。
そんな小春の姿を見ていたら私も涙が溢れてきて、2人で立ち上がり抱き合った。

絶対に成功させようーー
2人の心が通じあった瞬間がそこには確かにあった。