キミのために一生分の恋を歌う -first stage-

トントンと肩を叩かれる。
目を開けると心配そうに私の顔をのぞき込む諏訪野さんがいる。

「小夏、着いたよ」
「ファー……」
「すっごい寝てたね」
「うん。なんかすごく眠くて」
「お家でゆっくり寝な」
「うん……そうする」
「上まで送ろうか?」
「ううん、ここまでで大丈夫です」

本当に大丈夫か、大丈夫だからと何回か押し問答になったけど、荷物をまとめていると、諏訪野さんが車から降りてきて扉をあけてくれた。そしてカードのようなものを私の手のひらの上に渡してきた。

「小夏、コレ」
「何でしょう?」
「僕の名刺。IDも裏に書いてあるから後で連絡して」
「分かりました。今日は本当に何から何までありがとうございました」

ぺこりと頭をさげると、諏訪野さんは何でもないよと言って笑った。

「あの、bihukaは小春と二人で続けてきたんです。だけど私から小春にちゃんと伝えるので」
「うん。分かった」
「これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ。気をつけて帰るんだよ。連絡待ってるから」

そう言うと、諏訪野さんは私の背中を押した。
大人しく頭をまた下げて、私は家の中に入る。
最後に振り向いた時も諏訪野さんは私のことを心配そうに見ていたので、そのまま軽く手を振り彼から見えなくなる場所まで少し急いだ。