諏訪野さんがここでちょっと待っててと言ったので、入り口の辺りで5分くらい待っていた。辺りは随分日が暮れかけているけれど7時前の今はまだ少しだけ陽光が残っている。夕陽はまるで宝石のように光っていて、胸をうつ夏の匂いがした。
今日は何だか色んなことが起きた。
「お待たせ。乗って」
「ありがとうございます」
ぼんやりと今日起きたことを振り返っていると、いつの間にか諏訪野さんの車が目の前に来ていた。車種とかはよく分かんないけど、黒くて何だかスピードが出そうな感じ。
私は扉に手をかけて、助手席へと座る。
やっぱり座席も何だか柔らかくて身体が沈み込む。
多分高い車なんだろうな。
「シートベルト、ちゃんとしめてね」
諏訪野さんがさり気なく身体を近づけてシートベルトをしめるのを手伝ってくれるものだから、慌てて続きを引き受けしっかりとシートベルトを差し込む。
「しめました!」
「よし、じゃあ行こうか。家はどの辺り?」
「渋谷ラ・トーリエです」
「ものすごく良いとこ住んでるじゃん……」
と呟きながら、諏訪野さんが車を発進させる。
やさしい運転が彼そのものみたいだと感じた。
「今は妹と2人暮らしだから、親が色々心配して」
「親と一緒に住んでないんだ」
「ちょっと色々あったんです」
「そっか」
「親とは当たり前みたいに仲良くて一緒に暮らしてる、なんて私にとって幻みたいなものなんです」
「そっか。もしまた吐き出したいことがあったら僕に話してよ」
「ありがとうございます。あの……」
「疲れた? まだ熱があるから無理しちゃダメ。大体家の場所は分かったから着くまで寝てていいよ」
眠くて休みたいと伝えようとする前に、全てを見透かしたかのように諏訪野さんはそう言った。
私は心地よい揺れを感じながら座席に体を預け、そのまま眠ってしまった。
今日は何だか色んなことが起きた。
「お待たせ。乗って」
「ありがとうございます」
ぼんやりと今日起きたことを振り返っていると、いつの間にか諏訪野さんの車が目の前に来ていた。車種とかはよく分かんないけど、黒くて何だかスピードが出そうな感じ。
私は扉に手をかけて、助手席へと座る。
やっぱり座席も何だか柔らかくて身体が沈み込む。
多分高い車なんだろうな。
「シートベルト、ちゃんとしめてね」
諏訪野さんがさり気なく身体を近づけてシートベルトをしめるのを手伝ってくれるものだから、慌てて続きを引き受けしっかりとシートベルトを差し込む。
「しめました!」
「よし、じゃあ行こうか。家はどの辺り?」
「渋谷ラ・トーリエです」
「ものすごく良いとこ住んでるじゃん……」
と呟きながら、諏訪野さんが車を発進させる。
やさしい運転が彼そのものみたいだと感じた。
「今は妹と2人暮らしだから、親が色々心配して」
「親と一緒に住んでないんだ」
「ちょっと色々あったんです」
「そっか」
「親とは当たり前みたいに仲良くて一緒に暮らしてる、なんて私にとって幻みたいなものなんです」
「そっか。もしまた吐き出したいことがあったら僕に話してよ」
「ありがとうございます。あの……」
「疲れた? まだ熱があるから無理しちゃダメ。大体家の場所は分かったから着くまで寝てていいよ」
眠くて休みたいと伝えようとする前に、全てを見透かしたかのように諏訪野さんはそう言った。
私は心地よい揺れを感じながら座席に体を預け、そのまま眠ってしまった。


