神に選ばれなかった者達 後編

…その後のことは、最早説明するまでもないだろう。

萌音は、一人で待ち合わせ場所に向かった。

そこで久留衣家の父親と出会って、その日から萌音は、久留衣萌音となった。

久留衣家の両親は、本当に萌音に良くしてくれた。

これまで我慢し続けた反動、世の中の理不尽に対する怒りを爆発させた萌音は、そりゃあ厄介な子供だった。

しかし、久留衣夫妻は決して諦めなかった。

実の両親でさえ、萌音と向き合うことを早々に諦めてしまったのに。

限りなく優しく、限りなく辛抱強く、萌音を支えてくれた。

そのお陰で萌音は、次第に落ち着いていった。

そして…久留衣家の父親が言った、何気ない一言。

『声』が実体を持って現れてくれたら良いのに、という一言。

その言葉のお陰で、俺はこの世に生まれた。

「佐乱李優」として、萌音の傍で、萌音を支えてやれるようになったのだ。

それは良いのだが、何故夢の中で、俺の背中に羽根が生えているのか。

それについては、俺にはよく分からない。







ただ、「佐乱李優」として生まれる前。その直前。

何処からか、聞こえるはずのないラッパの音が聞こえた。

そんな気がした。