新月の天使

「そ、総長……」




さっきの低い声は、瀬那くんのものだったんだ。


あんな声、今まで一度も聞いたこともなかった。





「これは、どういう状況だ?なんで星那は泣いている?」






その目は鋭く光っていて、とてつもない怒りを感じた。


ゆっくりと、瀬那くんが近寄ってくる。



私は人の怒りに敏感だから、瀬那くんの怒りは私に向けられていないとわかる。


けど、何に怒ってるのかはわからない……。



ついに、瀬那くんが私の前にたどり着いた。


涙が止まらない。


もう敵意のある目を向けられていないと分かっていても、一度味わったものを切り離すのは難しいんだ。



突然、瀬那くんに腕をつかまれる。


一体、何がしたいのかわからなくて、瀬那くんの顔を見上げると、バチッと目が合う。



その瞬間、瀬那くんの綺麗な顔が悲痛に歪んだ。




な、んで……そんな顔をするの?


瀬那くんのその顔は、好きな人に向けるような顔だ。


君の好きな人は……私じゃないでしょう?





「星那、なにがあった?」





優しく、労わるような声色。


その声に心が軽くなるけど、それと同時に疑問が浮かぶ。



どうして?どうして、そんな事を言うの?


普通、その顔は中に向けるものじゃないの?


なんで、部外者の私にそんなことをいうの?



わからないよ……。





「せ、な……くん、」





声を振り絞っても、かすれた声しか出ない。