新月の天使

恐怖と、自分の場違いさを感じて、足が一歩後ろに下がった。


途端、ヒソヒソと話していた声が大きくなって、その声が私を確実に捉える。





「おい、幹部とどんな関係か知らねぇが、お前にみたいなやつが入ってくんじゃねぇよ!」



「そうだそうだ!部外者のくせに!!」


「ようやく来なくなったと思ったのに、何ノコノコやってきたんだよ!」





〝怖い〟その2文字が、頭の中を埋め尽くした。




「は、ぁ……、はぁ…、」





次々と流てくる、あの頃の記憶。




『汚い』『気持ち悪い』『コッチ来るな』





そんな言葉が、頭の中を飛び交う。


苦しくて、怖くて、うまく息が吸えない。




なんで……なんで……、わたしだって、好きでそうなったわけじゃないのに。



会えるなら……会いたいよ、家族に。


本当なら、今は家族皆で出かけてたりするんだ。


青藍にも会わなくて、別の高校に通ってて、柚葉ちゃんにも出会うことはなかった。




息が苦しくて、胸のあたりの服をクシャッと握る。


自然と、目から涙がこぼれ落ちた。





「はぁ……、ぁぁ、は……い、ゃ……、」





本能が、逃げろって言ってる。


このままここにいたら、危ない。




そして、もう一歩後ろに下がったとき。







「────────おい」







驚くほど低い声が、室内に響いた。



その瞬間、私に向けられていた視線が逸らされて、苦しみが少しだけ軽くなる。