「………おい、この娘はどこの子だ?」
「こいつはあんたに関係ない」
「関係ないだァ?ここまで俺に手ェ焼かせておいて、なに言ってやがる」
わっ…!
ぐいっと簡単に引っぱられて、わたしの身体はすてんっと畳に転がる。
緊迫した状況を見つめていた矢野さんまでもが額に汗を垂らしながら立ち上がった。
「組長、たしかにカシラの行動は毎回勝手です。しかし今回だけは少し違うと私も思い───」
「ああ?矢野、いったいテメェはなにを勘違いしてんだ。俺が怒ってんのはな、このクソガキが世話んなってるとこの女に手ぇ出したことだ」
「………は?」
あぐらをかいて、ふて腐れた顔をしながらあたまを乱暴に掻いた息子がひとり。
矢野さんの呆気に取られた顔がなんだか面白くて、わたしはもう少し見ていたいとも思ってしまった。



