ゆーみ。
女の子みたいな名前。
はくら、ゆうみ。
「ここは雲雀(ひばり)会っていう、国内でも3本指には入る悪党集団………は、言う必要ないか」
「……ゆー、ぃ…?」
「…そ。ゆーみ」
わたしひとりじゃすぐに落ちちゃうからと心配してくれたのか、しゃがんだ背中から抱きくるめるようにいっしょに持ってくれた線香花火。
すぐ隣にある年上のお兄さんの、あたたかな火花が照らす微笑んだ顔。
「…おまえも大変なとこに来ちゃったね」
だんだん膨らんでいく小さな光。
落とさないように、揺らさないように、じっと神経を集中させる。
「聞こえてないのは嘘だったりしない?だとしたらかなりの策士だ、ここで生きる素質あるよ」
「……………」
「……覚えときな。幸せを掴むことに音なんか大して必須じゃないって」
冬のはじまりを教えてくれる冷たい夜風が、短くなったわたしの髪に話しかけてくるみたい。
パチパチパチと、弾けるような音が初めて聞こえた気がした。



