男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 そもそも私はそこら辺の貴族令嬢のように、お茶会を開いたり誘われたり、パーティに顔を出したりするだけの人生に興味はない。
 基本的にクリエイティブに働いていたいという社畜精神を持っているため、忙しいのもとても充実していた。
 ただ一つ、心配事といえば……。

「リーチェ様!」

 客間の扉を開けると、そこにはあのマリーゴールドの姿が。私を見つけた瞬間、ソファーから腰を上げて駆けてきた。
 輝かしい黄金色の髪と同じように眩い笑顔で私に抱きついたマリーゴールドは、相変わらず人懐っこくも愛らしい笑みを携えて、私の体を解放した。

「お久しぶりですね! もうお身体は大丈夫なのですか?」
「ええ、すっかり元通りです」

 マリーゴールドは私がキールに連れ去られたことを知り、ずっと気にしてくれていた。私が目を覚ました後、今日のようにわざわざお見舞いにも来てくれた。
 その時のマリーゴールドの口調ときたら……今のこの天使の顔からは想像もできないほどに口汚く罵っていて、私は毎日ベッドに横になっていたせいで鈍っていた頭が一瞬でハッキリしたほどだった。

「でもあのクズ野郎はどうして斬首刑に処されなかったのでしょうか?」

 ほらこうやって、チェリーピンクの口元から禍々しい言葉が次々と飛び出す。表情にはそんな毒々しさは微塵も感じられないのがまた、私の心臓をギュッと締め付ける要因だ。