男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「ああ、リーチェ。リーチェ……」

 意味もなく私の名を何度もつぶやくレオンは、キスをやめた後まとわりつくようにギュッと私を抱きしめ、私の豊かな赤い髪に戯れるように顔を埋めている。
 そんな切なる声で抱きしめられては、今度は私の心臓が溶けてしまいそうだ。
 推しにキスされたことも、こんな風に名前を呼ばれていることも、私のキャパシティをゆうに超えている。
 ……いや厳密に言えば、レオンはもう私の推しではない。推しに似て異なる人物だ。

 レオンは私の宿命の相手でも、運命の相手でもないかもしれない。だってこの世界は私の知る『青愛』の世界とは似て異なる世界だから。
 正直この先の未来で、レオンと私の関係が上手くいくかどうかも分からない。
 そんな未来を私は知らないのだから。

 ……でもそれなら、レオンがマリーゴールドとくっつく未来も、くっつかない未来も運命とも宿命とも言えない。
 だって、誰にも未来は分からない。
 だったら私は、今ここにある自分の気持ちを大切にし、信じて未来を作り上げていくしかない。
 レオンと共に歩んでいく遠くて長い未来を求めてーー。