男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「運命は変動的、けれど不動の運命のことをなんと呼ぶかご存知ですか?」
「不動の運命……?」

 瞼を優しくおろして瞬きするれば、目に溜まっていた涙は全て流れ落ち、視界がクリアになる。
 クリアになった世界で私の目に飛び込んできたのは、拳ひとつ分先にあるレオンの弓なりにしなった口元と、優しげで愛おしげに角を落とした目尻だった。

「人はそれを宿命と呼ぶのです」

 レオンは言いながら両手で私の頬を指先で撫で付け、そのままコツンと額と額を重ねた。

「宿命とは、前世から定められた運命。避けることも変えることもできません」

 レオンとマリーゴールドは出会った。私が知ってる物語通り宿命のように出くわした。
 けれど二人がくっつく未来までが宿命なのではなく、それはただの変動的に変えることができる運命……?

「リーチェ、私はきっとあなたを好きになるように宿命づけられていたのですよ」

 レオンが私を好きになるのが、宿命?
 ついさっきまでの私なら、その言葉を跳ね除け、鼻で笑っていただろう。
 だけど……。

「ですからリーチェも、本当は私のことが今でも好きなのだと思っているのですが、私の勘違いでしょうか?」

 私はもう、目の前にいるこの男が私の知ってる紙上のレオンではないことも、私がキールに恋をし命を絶つリーチェではないことも知っている。