男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「いくらリーチェでも、この気持ちだけは否定することはできな……」

 レオンの瞳が大きく見開かれたかと思ったら、レオンは私の手をパッと離したと同時に彼の両手が、両腕がーー私の首に抱きついた。
 それとほぼ同時だった。私の頬に温かなものがツーッと流れ落ちたのは。

 初めはたったの一筋で。けれどもレオンの優しい温もりと、あの甘すぎない爽やかなレオンの香りに包まれると、どんどん涙が溢れてきて止まらない。
 溢れ出る涙は、まるで私の気持ちのようで。その涙に押し出されるようにして、固く閉ざしていた扉が開いた気がした。

 扉は私がレオンに対する否定的な情動。彼の気持ちを本気に捉えてはいけない。
 受け入れてはいけない。だってそれは全て一時的なもので永遠ではない。
 マリーゴールドに対する感情が本物に決まっている。
 そういった思考のバリケードで私は素直になってはいけないと思い続けていた。
 彼の気持ちを受け入れてはいけないと考えていた。

 だけど彼の感情は本物なのかもしれないって、やっと思えた。
 漫画のコマの隙間には、作者の私でも知らない情報が詰まっている。
 ページ内に広がる世界は彼らのごくごく一部で、実際はもっと広く深いバックグラウンドがあるのかもしれない……って以前、そんな風に思ったことがある。
 まさにそれと同じで、レオンとマリーゴールドのために作り上げた運命は、彼らの長い人生の中では一時的なものだったのかもしれない。