男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「……はい?」

 レオンに掴まれていた手をそっと引き離す。引き離した後、私は初めて自分の推しである人物に侮蔑の視線を向けてしまった。

「それは、私とマリー様で二股したいという宣言でーー」
「違います」

 レオンは面食らった顔を一瞬見せたけど、私の言葉に俊敏に反応し、颯爽とした返事を返されてしまう。さすがは帝国一の騎士。瞬発力は会話にも適用されるらしい。
 っていうかなぜレオンが驚くのか。私の方が面食らったのだけど。

「ですがマリー様に何か感じたとおっしゃっていたのに、私を振り向かせたいというのは、その、なかなかの……」
「ゲスではありません。私はコーデリア公爵とは違います」

 あっ、今度は言葉を先回りして言われてしまった。

「でしたら……?」

 運命の相手を見つけておいて、私の事を振り向かせたいなんて言われたら、普通はそう思ってしまうのが道理かと思うのだけど。
 もちろんレオンがそういうタイプではない事は知ってるけど、知ってるからこそ頭が混乱するというか。
 恋愛と結婚は別とかいうアレと同じこと? だとしたらやっぱりこれってクズ極まりないと思うんだけど。
 ……ってかそんなレオンは私の作り上げたレオンからかけ離れすぎている。
 グルグルと脳内をさまざまな考えが駆け巡っている間に、レオンは落ち着き払った言葉で、立て膝をついた状態のまま私の顔を見上げている。