男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 言った言葉は本心だ。胸に痛みを感じるのも事実だけど、その気持ちにも嘘はない。
 そう思ったけれど、私はレオンの表情を見てさっきよりも心臓が圧迫されたような苦しみを感じた。
 だってレオンはホッとするようで切ないような表情を見せると思っていたから。
 それなのにどうして彼は心臓をひと突きにされたような、悲痛な顔を見せるのか……?

「……では、好きな人がほかにできたのですか?」

 初めてレオンから怖気づくような声色を聞いた気がした。

「好きな人は……」

 いると答えた方が、良いのだろうか。その方がレオンはスッキリとした気持ちでマリーゴールドと一緒になれるのだろうか。
 だけど……これ以上自分の言葉を偽りたくはないと思った。散々言葉を捻じ曲げて、留めてきたんだから。

「……いません」

 私の言葉に、レオンがホッと息をついたのが見えた。けれどその意味を考えると自分にとって都合の良い答えしか出てこない。
 それは同時に、今の私が冷静に物事を判断できないでいる理由でもある気がして、今はそのことについて考えないことにした。
 そう決めたのに……。

「ではリーチェ、私にチャンスをくれませんか?」

 レオンは椅子から腰を上げたと思ったらそのまま地面に膝をつき、私の手を取って懇願するようにその手を自身の額に当てた。
 この状況とレオンの言うチャンスの意味がわからず困惑する私を見上げて、私の手の甲にキスをする。

「私に、リーチェを振り向かせるチャンスを下さい」