男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 さっきまで落としていた肩と同じように、伏し目がちだったレオンの瞳が今では大きく見開かれている。
 私の言葉に驚きを隠せず、それを包み隠そうともせず、ただ愚直に私を見つめている。

「……もう、過去なのですか?」

 現在進行形です、なんて流石に言えるわけがない。
 だから過去形にしたくらいの小さな嘘は、許してもらえるよね?
 むしろこの嘘はレオンを思ってついたものだから、最後まで全てをさらけ出せない私を許して欲しい。

「はい、過去です」
「それは私が今、クレイマス令嬢に不思議なものを感じたと言ったからですか?」
「いいえ」
「ではリーチェが、私と彼女が一緒になる未来を見たからですか?」
「違います」

 私は歯切れ良く、レオンの目を見ながらハキハキと返事を戻していく。
 隙を与えてはならないと思う気持ちが、私を合いの手を入れるようなテンポで返事を返させる。
 その勢いに乗せて、さらにこう言った。


「だから私の事は気にせず、マリー様と幸せになって下さい」